J-KISS型新株予約権とは？メリット・デメリットと登記方法を解説！
目次
J-KISSによる資金調達とは？
スタートアップの資金調達には、デット・ファイナンス（負債を増やす）とエクイティ・ファイナンス（資本を増やす）という方法があるわ。！
| デット・ファイナンス | 借り入れや債権の発行等の負債による方法 銀行や公庫から融資を受ける |
| エクイティ・ファイナンス | 株式を発行してベンチャーキャピタルやエンジェル投資家（起業して間もない企業に資金を出資する投資家）から資金を調達する方法 |
デット・ファイナンスには返済義務や利息の支払いという負担があるわ。
そうね。創業前後の時期(シードフェーズ)の資金調達ってけっこう大変なの。知識や経験がないから不利な条件で投資契約をしてしまうこともあるわ。投資家もその会社にどれくらい価値があるのか判断できないから、いくら投資していいかわからないことが多いの。そこで使われるのがJ-KISSよ！
J-KISSって何？
J-KISSは「Keep It Simple Security」の略なの。「新株予約権を投資家に買い取ってもらう」というのがJ-KISSを用いた資金調達よ。
新株予約権とは、会社が発行する株式を定められた価格で前もって取得できる権利のことよ。
事業が本格的にスタートして、商品やサービスの認知度が上がりはじめているものの、事業が軌道に乗るにはあともうひと息･･････という段階があるわよね。このような成長フェーズを「シリーズA」と言ったりするわ。
創業前後の時期にJ-KISS型の新株予約権を買い取った投資家は、シリーズAのフェーズで発行されるA種優先株式(シリーズAの時期に増資による資金調達で発行される種類株式のこと)をバリュエーションの80％で取得できるのよ。
なるほどね！もしシリーズAのフェーズで増資による資金調達が行われなかった場合はどうなるの？
投資家との間で合意したバリュエーションキャップ（評価上限額）を基準とした金額で普通株式に転換することが多いわね。
J-KISSを使った資金調達の最大の特徴は、投資家が取得するのが生株（お金を払って株式を買う方法のこと）ではなく新株予約権という点なの。
J-KISSのメリット・デメリット
| メリット | ・バリエーション（評価）の先延ばしをして早期にエクイティ（株式や自己資本）で資金調達ができる ・登録免許税等の手数料負担が少額 ・定款変更や株式・資本金に関する登記を先送りできる |
| デメリット | ・日本ではまだ十分に普及していないので、リーガルレビューや登記実務に対応できる専門家が限定されているため報酬相場が高い ・協調投資する他の投資家やシリーズA以降の投資家等と個別に調整する必要があるため、対応コストがかかる可能性がある ・転換価値におけるバリエーションキャップ（企業価値の上限）を低く定めてしまうと、転換時に実際のバリエーションよりも安価で株式が転換されてしまう可能性がある |
スタートアップ時って財務データがほとんどない状態だからその会社の価値がわからないでしょ？だから投資する側はこの時期のバリュエーションが難しいし、会社側も低い評価を避けたいのよ。そういうわけでバリュエーションを先延ばしにすることはお互いにとってメリットなの！J-KISSは株式を付与するわけじゃないから資金調達時にバリュエーションを回避できるのよ！
なるほどね！メリットの「登録免許税を定額で済ませられる」ってどういうこと？たくさん資金を調達できたら、登録免許税を多く支払う必要があるんじゃない？
J-KISSで新株予約権を登記すると、いくら資金調達しても登録免許税が9万円で済むのよ！
J-KISS型新株予約権の登記申請に必要な書類
J-KISS型新株予約権発行の登記申請に必要な書類：
・株主総会議事録
・株主リスト
・新株予約権の引受の申し込みを証する書面（総数引受契約書でも可）
・払い込みを証する書面（払込期日を定めた場合で、かつ払込期日が割当日より前に到来する場合のみ添付する）
「払い込みを証する書面」というのは、投資家が新株予約権を取得するときに払い込んだ金額に関する証明書のことよ。これは会社側が作成するわ。
新株予約権を発行したときに登記する事項：
・新株予約権の名称
・新株予約権の数
・新株予約権の目的である株式の数、またはその数の算定方法
・募集新株予約権の払込金額もしくは、その算定方法または払込みを要しないとする旨
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額、またはその算定方法
・金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
・新株予約権を行使できる期間
・新株予約権の行使の条件を定めたときはその条件
・新株予約権の取得条項を定めたときはその取得条項
・新株予約権を発行した日
